― 「今年の物理で本当に問われた力」とは ―
大学入試共通テストの物理は、年々その姿を変え続けている。
単なる公式暗記やパターン処理では太刀打ちできず、「物理を本質的に理解しているか」が強く問われる試験へと進化してきた。
そして今年度の共通テスト物理も、まさにその流れを色濃く反映した内容だった。
本記事では、詳細な分析と所感を
- 全体構成と難易度
- 各大問の出題意図
- 受験生が戸惑ったポイント
- 今後の学習で絶対に意識すべき対策
を、受験生目線でわかりやすく、かつ本質的に解説していく。
「共通テスト物理で安定して得点したい」
そう願うすべての受験生にとって、今後の学習指針となる内容だ。
◆ 全体概観|今年の共通テスト物理はどんな試験だったのか
まず全体構成から整理しておこう。
- 大問数:4題(昨年と同じ)
- 設問数:昨年より3問減少
- マーク数:2つ減少
- 出題分野:物理全範囲から満遍なく出題
構成は以下の通りである。
| 大問 | 分野 |
|---|---|
| 第1問 | 小問集合(全分野) |
| 第2問 | 力学 |
| 第3問A | 熱力学 |
| 第3問B | 波動 |
| 第4問 | 電磁気 |
この構成自体は昨年度と完全に同一であり、形式面での大きな変更はなかった。
しかし、今年最大の特徴はここだ。
例年必ず出題されていた「実験・探究活動」を題材とした大問が、今年は出題されなかった。
これは非常に大きな変化である。
共通テスト開始以降、
「実験考察」「グラフ読み取り」「探究的思考」を前面に出した問題が続いていたが、今年度はそれが姿を消し、
- 定性的に選ぶ問題
- 知識だけで即答できる問題
も大きく減少した。
代わりに増えたのが、
理論に基づいて、計算と考察を積み重ねていく問題
である。
つまり今年の物理は、
- 目新しさは少ない
- しかし一つ一つを丁寧に理解していないと解けない
という、**「実力差がはっきり出る試験」**だったと言える。
◆ 難易度はどうだったのか
講師2名の評価を総合すると、
- 「やや難化」
- 「昨年並み」
という表現に分かれているが、これは矛盾ではない。
理由は明確で、
- 問題そのものは奇抜ではない
- しかし理論理解が浅いと得点できない
という構造だったからだ。
また今年は、
- 選択肢の数が少ない
- 明らかに誤った選択肢を消去できる問題も多い
という救済要素も見られた。
中には、
問題文を細部まで読まなくても、物理的におかしい選択肢を消すことで正解に近づける
という問題も存在した。
一方で、
- 計算過程をごまかせない
- 「なんとなく」で選ぶと確実に落とす
そんな問題も多く、思考力の差が点数に直結する構成だった。
◆ 第1問:小問集合(全分野)
第1問は例年通りの小問集合。
今年も以下の5分野から出題された。
- 波動(ドップラー効果)
- 電磁気(交流回路)
- 力学(見かけの重力・浮力)
- 原子物理(コンプトン効果)
- 熱力学(状態方程式・二乗平均速度)
問1:ドップラー効果(波動)
典型的なドップラー効果の問題。
重要なのはただ一つ。
波の速さは、波源の運動によって変化しない。
この原則を正しく理解していれば、公式適用で確実に得点できる。
また、
「波源が近づく → 振動数が増える」
という物理的イメージを持っていれば、概算でも判断可能だった。
問2:交流回路(電磁気)
コイル・コンデンサー・ランプを組み合わせ、
ランプが最も明るくなる条件を選ぶ問題。
すべてを数式で計算するのは非現実的で、
- 直流ではコイルは導線、コンデンサーは遮断
- 交流ではリアクタンスが働く
- LC直列共振で電流最大
という定性的理解が鍵だった。
共通テストらしく、「意味理解」が強く問われた一問である。
問3:見かけの重力と浮力(力学)
加速する系の中での現象を扱う問題。
ポイントは、
浮力は「見かけの重力」と逆向きに働く
という考え方。
バスの中、エレベーターの中など、
日常イメージと結びつけられるかどうかで差がついた。
問4:コンプトン効果(原子物理)
必要な式はすべて与えられており、
運動量保存則の式も記載されている。
計算量は少なく、正答率は高め。
「原子分野=難しい」という先入観を捨てられた受験生が有利だった。
問5:気体の状態(熱力学)
やや難関。
温度・物質量が異なる2つの気体について、
何が等しく、何が異なるのか
を正確に整理する必要があった。
状態方程式と二乗平均速度の意味理解が甘いと、ここで失点した可能性が高い。
◆ 第2問:力学(衝突)
今年の力学は、衝突を軸にした総合問題。
前半は典型問題だが、後半で思考力が問われた。
- 問1:壁との衝突(はね返り係数)
- 問2:2物体の衝突(運動量保存+はね返り係数)
ここまでは標準。
問題は後半。
ばねで連結された2物体に、別の物体が衝突するという設定で、
- 定義を正確に読み取る力
- 重心速度の理解
- 運動量保存・エネルギー保存の使い分け
が求められた。
テーマ自体は慣れないが、
問題文の定義に忠実に従えば解ける
という、共通テストらしい構成だった。
ただし試験中に読む負荷は大きく、
体感的にはかなり難しく感じた受験生が多いだろう。
◆ 第3問A:熱力学(熱サイクル)
定圧加熱 → 定積冷却 → 等温圧縮
という熱機関の問題。
- 熱力学第1法則
- サイクル一周のエネルギー収支
- 熱効率
といった王道内容が問われた。
特徴的だったのは、
P–Vグラフの面積をマス目から概算させる設問
数式処理だけでなく、
グラフを「物理的意味」で読む力が試された。
共通テストらしい良問である。
◆ 第3問B:波動(円形波×平面波)
今年最も戸惑った受験生が多かったのがここだろう。
円形波と平面波の干渉という、非常に珍しいテーマ。
- 強め合いの条件(経路差)
- 定在波の腹の個数
- 波面の時間変化
を頭の中で動的にイメージできるかが鍵だった。
特に最終問題は、
「2つの波が時間とともにどう重なっていくか」
を正確に想像できないと判断できない。
選択肢も紛らわしく、正答率は低めと予想される。
◆ 第4問:電磁気(荷電粒子の運動)
全体の中で、最も得点しやすい大問。
- 電場中:放物運動
- 磁場中:等速円運動
という基本事項の確認が中心だった。
ただし注意点は一つ。
電子(負電荷)であること
力の向きを正しく取れないと、一気に失点する。
最後の問では、
- 円運動の半径が何に依存するか
を正確に判断する必要があり、ここでミスが出やすかった。
◆ 今年の共通テスト物理が受験生に伝えたメッセージ
今年の試験を通して、はっきりしたメッセージがある。
それは――
「公式を覚えただけの物理」は、もう通用しない。
- なぜその式が成り立つのか
- どの物理量が何を表しているのか
- 現象をイメージできているか
これらが理解できていないと、得点は安定しない。
一方で、
- 教科書レベルの理論を丁寧に理解している
- 標準問題を「意味を考えながら」解いてきた
受験生にとっては、十分に戦える試験だった。
◆ 今後の学習で最も大切なこと
これから共通テスト物理を対策するなら、意識すべきは次の3点だ。
① 公式暗記から脱却する
② 現象を図で説明できるレベルまで理解する
③ 標準問題を“なぜそうなるか”で解く
難問演習よりも、
- 教科書
- 標準問題集
- 共通テスト形式演習
を「理解重視」で回すことが、最短ルートになる。
共通テスト物理は、決して意地悪な試験ではない。
むしろ、
物理をきちんと理解した人を、正当に評価する試験
へと確実に進化している。
今の努力は、必ず点数に変わる。
焦らず、しかし確実に、一歩ずつ積み上げていこう。
―― 物理は、理解すれば必ず武器になる。

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